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(3)「ドルフィン3K」用ケーブル捻れ監視システムの開発
ケーブルを有する無人潜水機を運用する上で大きな問題となるのは、ケーブルの捻れ特性に起因してしばしばケーブルが損傷することです。これは世界中の無人潜水機が有する共通な問題であり、安全な運用を行うためには、ケーブルの機械的あるいは力学的特性を把握することが重要になります。これを目的として、「ドルフィン3K」を対象に、ケーブルの捻れを監視するシステムを開発しました。システムは、ケーブルの捻れトルクを計測するためのトルクセンサーと、ケーブルが船上のウインチに巻き取られる際の捻れ分布を計測するための装置から構成されます。これらは1996年、「ドルフィン3K」に装備されて実海域試験を実施し、その有効性が確認されました。今後は、水中で曲がった状態にあるケーブルの形状をリアルタイムで推定する手法と合わせて、ケーブルの運用をより安全性のあるものとしていく予定です。
(4)雑海藻除去システムの開発
1991年から1993年に青森県との地域共同研究で雑海藻除去システムを開発しました。青森県下北半島北部は天然昆布の産地として知られていますが、近年磯焼けにより昆布の漁獲高の減少が深刻化しています。磯焼けというのは一般に大型の海藻が2〜3年の間に消失し、石灰藻だけが生き残って目立つようになる現象をさしますが、青森県では昆布が商品価値の低い他の雑海藻に置き代わる現象も磯焼けに含めています。雑海藻除去システムは磯焼けによって雑海藻に覆われた海底の岩を高圧のウォータージェットでクリーニングし、昆布の遊走子が着床できるようにするものです。実海域における試験は1994年に実施され、2年経った今年はまだ収穫が始まっていませんが、目視では大量の昆布が生育していることが確認されています。本システムの概念を図−4に示します。
(5)長距離航行型無人潜水機の研究開発
今日、地球温暖化の要因究明手段の1つとして海水中の炭素含有量などを分析し、物質循環のメカニズムを明らかにすることが重要な課題となっています。これを目的として、大水深水面や海氷下で採水、計測が可能であり、従来の有索無人潜水機では不可能であった水平方向の長距離移動ができる無索の長距離航行型無人潜水機を開発しています。現在は、決められた経路に従い航走できる無人潜水機の試作を行っており、長距離航走を可能とするため、航走抵抗が小さくかつ軽量となるように耐圧容器がそのまま機体となる構造とし、全長が約2.8mの

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図−4 雑海藻除去システムの概念図

魚雷型をしています。この無人潜水機は母船などによる支援を受けずに広範囲に移動することを前提としているので、位置の決定に音響測位装置を利用することが難しくなってきます。このため無人潜水機の測位には、海面に浮上したときにGPS受信機を動作させ自動的に位置を計測する装置を開発しました。
(6)6,500m級細径ケーブル無人潜水機「UROV7K」の研究開発
従来の無人潜水機では、支援母船より水中の無人潜水機へ電力を供給するため、支援母船と無人潜水機の間が太いケーブルで繋がれていました。この方式は、ケーブルが受ける水流の抵抗により運動が制約されたり、ケーブルが海底の岩や構造物、係留索に絡む危険があります。そこで、1988年より細径ケーブル無人潜水機の開発を進めてきました。これは直径約1mmの光ファイバーで支援母船と繋げているためケーブルに受ける水流により運動性能が制約されることがなく、船上装置も小型化できる等の特徴があります。これまでに、試作機「UROV2K」を開発し、実用機第1号「げんたつ」(写真−3)を福井県との地域共同研究で開発してきました。現在、6,500m級の「UROV7K(開発用仮名称)」を開発中です。
(7)水中観測機器用燃料電池の研究開発
水中観測ステーション、無人潜水機をはじめとする水中観測機器を開発する場合に、常に問題となる技術課題の1つが電源です。従来、有人潜水船や無人潜水機には銀亜鉛電池に代表される2次電池が使用されてきました。また、小型の計測装置や音響トランスポンダには、アルカリ乾電池やリチウム乾電池等の1次電池が使用されています。銀亜鉛電池、ニッケルカドミウム電池、鉛電池

 

 

 

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